前回、前々回と2つの信濃川発電所のことを取り上げたが、諸々調べている過程で
JR東日本信濃川発電所の不正取水問題が散見されたことから、それに関わることなどをメモ書きしておく。
『JR信濃川発電所 宮中取水ダム』から取水された水が再び信濃川に戻るのは、小千谷発電所から放流するまでない。(千手発電所から放水路はあるが、ほぼ放流することはないらしい)
前回掲載したJR東日本の「信濃川発電所概要図」だと、取水ダムから発電所まで近くのように見えるが、地図におとすと距離の長さはそうとうなものだ。

さらに言うと、前々回の『東電信濃川発電所』から宮中取水ダムの取水口までは、2kmも離れておらず、東電の発電所から放流された水は、すぐに取水されるわけだ。
つまり、上流の西大滝ダム(長野県飯山市)から下流の小千谷発電所(新潟県小千谷市)までは、本来あるべき川の水がダムのために取られてしまった。
発電所建設当時は、ダムに魚道を設けることもしなかった。かつて、千曲川・信濃川は水産資源が豊富でサケ漁も行われていたが、ダム建設によりサケ漁は一挙に衰退し、発電所完成の翌年(昭和15年)には終わった。
小千谷発電所の上流で魚野川が信濃川に合流するが、西大滝ダムから魚野川合流点まで約63.5kmの区間が極端な減水区間となり、川が干上がり底がむき出しとなるような状態もあった。昭和60年(1985年)に国鉄に対して十日町市が取水権の拡大を認めたことにより流量の減少は決定的となり河川環境が著しく悪化した。
しかし、このままではイカンと、平成9年(1997年)の河川法改正ではダムなどの事業者に対して河川流量(流量目標毎秒33トン)など環境の維持を求めるようになったが、毎秒7トンほどしか宮中ダムから放水しないJR東日本の姿勢は変わらず、さらに平成9年からは信濃川発電所の電力の社外への売電事業を始めた。これは関東圏の電車運行の安定が目的ではなく、ただの売り上げアップだ。
市は国土交通省に対して情報公開を請求し、平成20年(2008年)、JR東日本が信濃川から大量の水を不正に取水していたことが発覚した。当初、JR東日本は「取水は適正」と説明していたが。その後隠蔽工作が判明し、明らかになっているだけでも直近10年間の不正が確認された。
平成21年(2009年)3月10日、国交省は「極めて悪質かつ重大な河川法違反が行われていた」として同発電所の水利権取り消し処分が言い渡された。
JR東日本が消費する総電力量の4分の1を供給する主力の電源なので、電車運行に支障が出ることが懸念されたが、東京電力から電気を買って補った。
JR東日本は水利権再申請と発電所の再開に向け、市や漁協に対して河川の流量を維持する維持流量案を提案。市民にはこれまでのJRの姿勢に対する不信は根強く残っているものの、要望する地域共生策をある程度のんでもらって(?)、翌平成22年(2010年)6月10日、水利権を再許可し発電が再開された。
宮中ダムから下流へ最低限流す量(維持流量)を毎秒40~120トンとして、環境への影響を検証することになった。従来が毎秒7トンだったので大幅に増えた。(この違いは私も帰省時に見ているので驚いた)
宮中取水ダム放流量は、JR東日本のWebサイトで確認することができる。
今日(2018年9月1日)8:00の放流量は62.3トン/秒だった。
ところで、63.5kmという距離、上段の図でも新潟県以外の方は分かりにくいかもしれない。そこで日本橋から徒歩で約63.5kmをGoogleマップで調べてみると、熊谷駅の手前、土浦市役所、大磯町あたりが同じ距離。また、大阪市役所から比叡山まで。いずれにしてもけっこうな距離だ。